農園だより

12月17日 雨のちくもり

12月17日。朝から雨。冬の日の雨は棘のように冷たく、身を心をしりしりとしめつける。金曜日の朝は、作業場の掃除からはじまる。出荷や仕分けの作業で落ちた土や汚れを、ほうきで掃き出し、最後に水で洗い流す。デッキブラシで床をこすり、もう一度水で流す。作業台や棚についた汚れも、ひとつひとつ拭きとっていく。

掃除が終わると、スタッフ全員で朝の打ち合わせ。本日の予定と、種の話。畑で採種できたもののなかで、販売できるものとできないもの。交配しやすい品種としづらい品種。交配しやすい品種同士は、お互いの位置に気を付けて育てること。交配することが決して悪いことではなく、それによって新しい味や食感が生まれれば、明石農園の野菜として生かしていくこと、など。

純粋さだけが正しいのではなく、多種多様なものたちがいて、時には混ざり合い、そこから生み出されたものも多種多様のひとつとして生きつづけていく。人間が生きている社会とまったく同じ仕組みで、種の世界も成り立っている。この寛容性こそが、世界がつづいていくための、大きな力のひとつなのだと思う。

打ち合わせが終わり、次はまかない食堂の準備をはじめる。毎週金曜日の昼食は、畑でとれた野菜をつかってスタッフが調理をし、まかないとしてスタッフ全員で食べる。材料として使うのは、出荷の際にはじかれた、少しだけ傷がついていたり、のびのびと自由に育ちすぎた野菜たち。野菜をながめながら、相談をしてメニューを決めていく。本日の材料は、にんじん、青梗菜、大根、かぶ、さつまいも、生姜。

作業場の一角で、カセットコンロをつかってあわあわと料理をする。肉や魚、動物性の材料は極力つかわない。野菜がメインのまかない食堂。本日のメニューは、青梗菜と生姜の炒め物、蒸した王滝かぶの辛味噌づけ、農園でつくった味噌をつかったみやま小かぶとさつまいもの味噌汁、にんじんのごまサラダ。大皿にどんと盛られ、バイキングのようにそれぞれが食べたい分だけとっていく。濃い味つけをしなくても、野菜のうまみが色とりどりで楽しい。

昼食を食べ終え、片付けが終わったあとは、切り干しにんじんの仕込み。明石農園の切り干し大根や切り干しにんじんは、スライサーをつかわずに、すべて包丁で切られている。スライサーのほうが早くたくさん作れるが、包丁で切ったほうが、切り口の角が立ち、歯ごたえがよくなるとのこと。時々あれこれおしゃべりをしながら、作業場の静かな空間に、包丁の音がひびく。

そのまま夕方になり、本日の作業は終了。夕食は親芋カレーの予定で、すでに材料は煮込んである。あとは帰宅後、カレーをいれればできあがり。明石農園の親芋はほくほくおいしく、おまけに、しっかり煮ても煮くずれない。前日夜に仕込みをしても、芋の食感がしっかりと残る。

いただいた野菜をかごにのせ、雨あがりの道を、カレーのつけ合わせを考えながら自転車で走る。竹間沢の坂道を下ると、目の前にぽっかりとまん丸の月がうかんでいる。月のよこには、黄色とオレンジの光を瞬かせながら、蝶のような飛行機がひらひらと飛んでいた。

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