農園だより

10月27日 雨のち快晴

10月27日。夜から降りつづいていた雨は、でがけにおさまる。自転車で農園にむかう途中、雨雲の切れ目から、南アルプスの山並みがのぞく。

農園につき、午前中は明石さんとの打ち合わせと、うどんの撮影のお手伝い。
明石農園でとれた小麦でつくられた農家のうどん。古い機械でじっくりと、九時間もかけて挽いた小麦粉がつかわれている。ほかの野菜や農園に携わる方たちと同じように、地面を一歩ずつ踏みしめながら、ていねいに歩いているような、芯の強さをもった味がする。食べると口のなかに小麦の香りがぶわっとひろがり、水で食べてもおいしい、というのもうなずける。

作業場や畑のあぜ道、いろいろな場所で試行錯誤をしながら撮影をする。立てたり横にしたり積んでみたり。空は快晴で、日差しは夏の終わりのようにつよい。裏の栗の木の実は割れて、空っぽになったいがぐりが足元にころがっている。

撮影が終わり、お昼の時間になる。明石さんの叔母である、みさえさんからのおすそわけ。間引き人参のピクルス、茄子とピーマンのみそ炒め、大根葉の炒め物。ピクルスはさわやかな酸っぱさで、こりこり歯ごたえがおいしい。コチュジャンの辛みがきいたみそ炒めは、どんどんご飯がすすむ。朝の慌ただしさのなか、ありあわせでつくったおかず一品だけの弁当が、あっというまに豪勢になる。

お昼を終え、午後の作業をはじめる。作業台に落花生のつまったトレイが並べられていく。ひとつずつ手に取って、しっかりと粒がつまっている落花生を選別していく。三人で作業台を囲み、ひたすらに作業をつづける。一時間半ほどで落花生の選別を終え、つぎは枝豆。大きなケースにはいった枝豆が、作業台にどさりとおかれる。落花生とおなじように、虫食いや粒の小さいもの、かたくなりすぎたものを、ひとつひとつ手にとってはじいていく。

豆、豆、豆。いつの間にか、作業台を囲む人の数が五人に増えていて、総出で枝豆を選別する。午後になって日差しがさらにつよくなり、作業場は汗ばむほど暑い。手と目は枝豆につきっきりのままで、野菜の話、料理の話、陶芸の話、畑や移住の話、あれこれおしゃべりをつづける。作業をしながらも、農園はいつでもにぎやか。ときおり足もとを、黒猫が通りすぎる。

ケースが空になりひと息つくと、また大きなケースが持ち込まれる。そのケースが空になると、またさらにケースが運ばれてくる。それを四、五回くりかえし、ようやく枝豆の選別が終わる。日もかたむき、あたりはうす暗くなっている。最後に、保存用のさつまいもの箱詰めをすこしお手伝いし、本日の作業は終了。販売できない規格外の落花生と枝豆を袋いっぱいにいただいて帰路につく。

自宅に戻り、大量の落花生の皮をむく。農園のお手伝いをしていて、とてもうれしいことのひとつ。野菜を選別していると、どうしても販売ができない野菜がでてきてしまう。形が小さすぎたり、固くなってしまっていたり、すこし傷がついていたり、虫に食われていたり。お店には並べられなくても味は変わらない。その野菜たちをいただいて、あれこれ思い切り料理する。スーパーでは小分けでしか売っていないルッコラも、ボウル山盛りでサラダやパスタに使う。ミニトマトはまとめて湯むきして、マリネやゼリーやジャムにする。これは、農業に携わる人たちの特権だと思う。そのご相伴にあずかりながら、明日は枝豆をぜいたくに使うことにする。

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